痔とは肛門やその周辺に起こる病気の総称で、ひとつの病気を指しているのではありません。
日本人の3人に1人は痔であると言われるほど多い病気です。
痔核(じかく)(イボ痔)・
裂肛(れっこう)(切れ痔)・
痔瘻(じろう)(あな痔)の3種類からなり、それぞれ原因や治療はことなります。
痔は人類が2本足で歩き始めたときに発生したといわれるほど、人との付き合いの長い病気で、間違った治療も多く行われてきました。
このため、「痔の治療は痛い」とか、「手術するとかえっておしりが変になる」という声を耳にします。
しかし、現在では専門病院においてどのような痔も痛くなく、肛門機能を損なわずに治療することが可能です。
痔の中でも最も多い病気です。ほぼ男女同数にみられ、できる部位により、内痔核と外痔核があります。
◆ 内痔核の原因と治療
通常肛門は、便やガスが無意識のうちに漏れたりしないように、括約筋という筋肉で閉じられています。
肛門の奥の粘膜部分には数カ所柔らかい盛り上がり(クッション)があり、括約筋が強い力で収縮しなくても便がもれないように水道の蛇口のパッキンのような役割をはたしています。
内痔核(イボ痔)はこのクッションが腫れて大きくなったものです。
排便時のいきみや高齢化により、腫れたクッションの支えがゆるんで肛門の外に出てくる様になった状態を脱肛といいます。
| 内痔核はその程度によって分類されます |
| 第1゜ | 出血はあるが排便時に肛門外に脱出しない。 |
| 第2゜ | 排便時に脱出するが、自然に元に戻る。 |
| 第3゜ | 指で押し込まないと還納できない。 |
| 第4゜ | 常に肛門外に脱出している。 |
粘膜には痛みを感じる神経が来ていないので、出血するわりには痛くありませんが、第4゜のように痔核全体が肛門外に脱出して戻らなくなったり(嵌頓痔核 /
かんとんじかく)、
頻繁に脱出することにより痔核の根元が裂けたり(脱出性裂肛)すると、痛みを伴います。
初期のうちは、入浴などで血流を良くし、座剤などを使用することで、クッションの腫れを取ることができます(可逆性変化)。
しかし進行して薬を使用しても腫れがとれなくなったり、クッションの支えが緩みっぱなしで脱出した痔核が戻りにくくなってしまう(不可逆性変化を起こす)と手術が必要になります。
一般には結紮切除法
(けっさつせつじょほう)という方法で手術が行われています。これは、痔核に流れ込む血管を縛り(結紮 /
けっさつ)、痔核をそっくり切除する方法です。
当院では、内痔核の成因と術後の肛門の形と機能を考え、脱出しているクッションの不可逆性変化を起こした余分な中身だけを切除して、残った正常なクッションを肛門の奥の本来の位置に戻して、
時間が経つと溶けてしまう糸で固定する方法を行っています(肛門形成術)。
そのため術後の肛門にみられることのある狭窄などは起こりません。
◆ 外痔核の原因と治療
肛門付近の皮下の内出血や血栓(血のかたまり)を形成する外痔核は、便秘で力んだり、重いものを持ったりして急に腹圧をかけることによっておこることが多く、内痔核と違いかなり痛みます。
入浴によって肛門部を温めて血行を良くし、排便の調整や座薬、軟膏などの外用薬、消炎剤の内服などを行うと、数日で急性症状はとれます。
特に痛みが強い時は、簡単な外来手術で痛みをとることができます。
| 日常生活の注意点 |
1.便秘をしない。
2.下痢をしない。
3.排便時間を短くする。
4.患部を冷やさない。
5.肛門をいつも清潔にする。
6.腹圧のかかる姿勢を長時間とらない。
7.アルコールはひかえめに。 |
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| (1) ジオンによる注射療法について |
ジオンは、中国で行われていた消痔霊という注射療法を日本で改良したもので、2005年に保険適応となり注目されている方法です。
ジオンという注射薬を内痔核に直接注射することによって痔核を縮小させる方法で、手術療法と違ってメスを入れないため治療後の痛み、出血が少なく入院も短期間で済みます。しかし全ての痔核疾患に効果があるわけではなく、適応を厳密に選択しなければなりません。
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| 適 応 |
適 応 外 |
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・排便時に軽く出血 ・痛みはなくて出血する |
・排便時の度に脱出 ・皮膚の部分も脱出しているもの
・脱出が強度のもの |
・嵌頓痔核 (痔核が腫れ上がっている状態) |
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※ジオンによる注射療法の注意事項
注射の方法が複雑で難しく、安易に行うと直腸狭窄、壊死、前立腺炎などの合併症の危険があり、現在のところ講習を受けた専門医に限って施行されています。
北海道内には50名ほどの資格を持った医師がいますが、当院の医師は全員資格を持っており熟知していますのでご相談下さい。
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| (2) 痔核に対するPPH法について |
PPH(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)は1993年にイタリア人のLongoにより、
紹介され1998年頃日本に入ってきた治療方法で、直腸下部粘膜を器械を用いて環状に切除することによって痔核を縮小させる方法です。
皮膚に創を作らないので手術後の痛みが少なく、入院期間も短く済む事が長所です。2006年4月より一部の施設に限って保険が適応になりました。
しかしこの方法は重篤な合併症(直腸膣瘻・敗血症)を引き起こす可能性があり、また再発・後遺症などの長期的な経過がまだ不明であり、問題が残っています。
またこの方法で効果のある痔核は皮膚の部分の脱出や外痔核のない軽度の痔核に限られており、このような痔核に対しては当院では以前よりもっと簡単な方法(ゴム輪結紮術など)を行っているため、PPH法は行っておりません。
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便秘気味の若い女性に多くみられ、痔の中でも痛い病気の代表です。
便の通過の際に、支えの弱い肛門内側の皮膚が切れることにより起こり、排便の度に同じところが繰り返し切れるために、傷が硬くなり、やがて潰瘍になったり、傷の縁の皮膚が盛り上がってイボができたりします。
この様になると、肛門の括約筋が硬くなって肛門が狭くなり、排便時の痛みはさらに強くなります。
トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。
「痛いからトイレを我慢する→ 便が硬くなる→ 切れる」という悪循環になります。
◆ 裂肛の治療
| 日常生活の注意点 |
1.便秘をしない。
2.患部をいつも清潔にする。 |
多くの肛門科の専門病院での治療法は、硬くなった肛門の括約筋を切開する手術が一般的に行われています。
このため数日間の入院が必要となるところが多いようです。切開するといってもほんの少しですから、すぐに肛門の締まりが悪くなったりすることはないようですが、年を取ってからのことを考えると少し心配です。
当院での治療は、肛門周囲の痛みだけが完全に取れる
硬膜外麻酔をして、硬く狭くなった肛門の括約筋を正常な状態になるまでマッサージして引き延ばします。
マッサージの時間は10秒程度です。道具は一切使用しません。入院の必要もありません。麻酔で痛みを完全に取ってからマッサージをするのがポイントです。
翌日の排便から痛みはほとんど消失します。この方法は当院で1978年に開発した方法で年間約300例程行なっており、学会や論文でも発表され、良い評価を得ています。
肛門は縁から2〜3p薄い皮膚が入り込み、その奥は直腸の粘膜になります。
皮膚と粘膜のつなぎ目を歯状線といい約10個程のくぼみがあり、このくぼみである肛門小窩は肛門腺という分泌腺につながっています。
下痢をした時や体調が悪く体の抵抗力が低下した時などに、肛門小窩から入った細菌が肛門腺で炎症を起こし、これが拡がって肛門周囲や直腸周囲に膿瘍を作ることがあります。
膿瘍は自然に破れて膿が外に出るか、切開して膿を出さなければ、どんどん拡がってしまいます。
ふつうは強い痛みと発熱が生じますが、膿が直腸の奥の方に拡がった場合には痛みが少なく自覚症状が軽いため、かなり悪化してから病院を受診する患者さんもいます。
排膿後に、膿の溜まった部分がトンネル状になったものが痔瘻です。単純なものから複雑に枝分かれしたもの、浅いもの、深いものなどいろいろなタイプがあります。
腸炎に合併するような特殊なものを除くと、痔瘻のトンネルの入口は歯状線上にあり、再び下痢をしたり体の抵抗力が低下した時に進入し膿瘍を形成し切開を要します。
しかし切開しても痔瘻は残ります。痔瘻を長期間放置すると癌になるとの報告もあります。
◆ 痔瘻の治療
| 日常生活の注意点 |
1.下痢をしない。
2.膿瘍は切開をうける。
3.早い時期に根治手術を
うけるようにしましょう。
4.アルコールはいけません。 |
痔瘻を根本的に治すには、入口を含めてきちんとトンネル(瘻管)を処置することが必要です。
この際肛門括約筋を損傷すると肛門の変形や、機能低下をきしますので、括約筋を温存した手術が必要です。
手術に要する入院日数は、数日間から約1週間ですが、深く複雑なものでは約3週間程かかる場合もあります。
痔瘻は男性に多くみられる病気です。
痔にならないためには、日頃から肛門の健康管理が必要です。
まず、排便をきちんと習慣づけること、便の材料となる食物繊維をたくさん摂取し、水分を多くとり、便を膨化させ良い便にすることです。
便秘は、痔にとってはもちろん、大腸癌にとっても危険因子です。また、適度なスポーツも効果的です。
肛門に痛みや違和感、また排便時に出血が見られるようであれば、早急に専門の病院で診断、治療を受けてください。
痔瘻の手術は肛門括約筋の処理を伴うので痔の手術の中では最も難しいと言われています。特に深部の複雑な痔瘻の手術は高度の技術と経験が必要です。不用意に肛門括約筋を損傷したり誤った手術がなされると肛門の機能を損なってしまい、一生涯ガス漏れや便漏れで悩んだり、最終的には人工肛門にせざるを得なくなったという話は良く耳にします。
当院では以前より深部の複雑な痔瘻に対する手術方法を研究してきています。当院で行っている長期間入院することなく安全で肛門機能を優先した術式は、学会発表、論文などで全国的に評価を得ています。
硬膜外腔という所に、歯科で使用するのと同様の局所麻酔薬を注入することにより、肛門の周囲の痛みを完全に取ることができます。
安全で、2〜3時間で完全に覚めますので、覚醒後は車を運転して帰ることもできます。
この麻酔のおかげで、裂肛・外痔核・肛門周囲膿瘍の日帰り手術が可能になりました。
日本で、硬膜外麻酔を肛門の手術に応用したのは、当病院が最初です。
現在は学会や論文などの発表により、全国的に広まりつつあります。